江國香織さんの小説に出会ったのは、10代の時。
高校の現国の模試か過去問かなんかでした。
短編小説の『デューク』が問題文として載っていたのです。
模試中にもかかわらず、私は『デューク』に完全に魅せられました。
言葉の端々が美しくて、繊細で、丁寧で、とてもよかった。
出典を確認して、すぐに『デューク』の収録されている短編小説集『つめたいよるに』を買いました。
それから、私は江國香織の本を読み漁りました。
今まで感じていたのに、言葉にするのは難しかったような感情を、江國香織さんが上手に表現してくれているような、そんな気持ちになり、自分の中で革新的でした。静かな革新的さです。
今回は、おすすめの江國香織の本をいくつか紹介してみたいと思います。
目次
『すいかの匂い』
『つめたいよるに』の次に読んだ短編小説集。
『つめたいよるに』も好きなんだけど、全体で見れば、こちらの作品集の方が好きな話が多かった。
『蕗子さん』や『水の輪』では、背筋が凍る思いがした。普通そうな人の見せる、ふとした瞬間の狂気が怖かった。
『あげは蝶』では、嫌いな新幹線の中で、私も幼くなって誰かに連れていかれるような気がした。
『弟』では、最後の一文がずっと心に残っている。夏にたまに思い出す一文。
『焼却炉』では、出てくる小さな女の子が、自分のような気がした。
夏にぜひ、読んでほしい作品。
解説の川上弘美さんの文章もとても良い。江國香織の作品を読んで感じた気持ちを、代弁してくれているような気になる。
『神様のボート』
あとがきの一文で、江國香織さんは「小さな、しずかな物語ですが、これは狂気の物語です。」と言っている。
母葉子と、娘草子の物語。
「必ず戻る」と言って消えてしまった「あのひと」を愛し続ける葉子。次第に大人の階段を昇る草子。
「あのひと」のいない場所にはなじめない、なじんではいけないと思っている葉子の狂気が、何気ない生活の端々にみえる。
江國香織の本の中に出てくる物も好き。
この本では、「シシリアンキス」というお酒の名前を覚えた。
好きなカクテルがあるってことは、素敵なことだ、という意識が芽生えたが、今のところ私の好きなカクテルは、ジンバックとキティで、おしゃれさが足らない気がしている。
『ホリー・ガーデン』
果歩と静枝は昔からの友達で、お互いの恋愛のことも知っている。
30歳目前の2人の、日々と恋愛。
忘れられない人の存在や、無邪気に自分を慕ってくる年下男子など、女性は共感できる部分も多いんじゃないかと思う。
「忘れっぽいっていうのはすこやかなこと」というのは、とても納得のいく言葉だった。
ホリー・ガーデン (新潮文庫 新潮文庫) [ 江國 香織 ]
『きらきらひかる』
結婚した夫婦。
でも、夫はホモで恋人がいた。
妻はアルコール中毒・うつ。
夫の恋人の「紺くん」が妙に魅力的だった。
愛し合って結婚した夫婦ではないのに、夫の「睦月」は優しいのに、妻の「笑子」はどこか「睦月」が手に入らないような寂しさを感じ始めて、胸が痛かった。
『間宮兄弟』
世間から「へん」だと思われても、楽しく暮らす兄弟の物語。
(とても仲良しで、ちょっとあやしいとさえ思ってしまう。)
もてない兄弟が、自分の世界を大切にしつつ暮らしている姿が、なんだか嬉しくて勇気づけられるような、そんな気持ちになる。
『すみれの花の砂糖づけ』
詩集。
まずは、題名が可愛らしくて好き。
1つだけ引用させてもらいます。
「うしなう」
私をうしないたくない
と
あなたはいうけれど
私をうしなえるのは
あなただけだよ
遠くにいかないでほしい
と
あなたはいうけれど
私を遠くにやれるのは
あなただけだよ
びっくりしちゃうな
もしかしてあなた
私をうしないかけてるの?
(P58ー59)
江國香織さんっぽいな~なんて。
おわりに
『僕の小鳥ちゃん』も大~~好きなのですが、以前荒井良二さんの記事で言及したので、割愛しました。
こちらもおすすめできる本です。
江國香織の世界観は独特で、なんていうか、雨の日に家に閉じ込められたような感じというか、表現の仕方がわからないんですけど、静かで、触ると少し冷たくって、胸に深く沈みこむような、いつかどこかで感じたことがあるような、そんな感覚がします。
女性に特に好まれるような、繊細な文章だと思います。
女性の気持ちを知りたい!という男性にもいいかも?!
本に出てくる主人公は、たいてい、攻略困難なタイプの女性だと思います…。
物事を深く考える人、実は心のなかは敏感だという人、なんかにぴったりなんじゃないかな…。
起承転結がはっきりあるわけではないので、「何も起こらない」状況に好き嫌いが別れるとは思いますが、私はとても好きです。
また、読み返してみようと思っています。
まずは間宮兄弟から!