福岡の三大祭りのひとつである筥崎宮の【放生会】。
その、名物でもある『見世物小屋』に初めて潜入しました!
今まで怖くて入ることができていなかった、見世物小屋の体験記です。
見世物小屋とは。
見世物小屋(みせものごや)は、珍奇さや禍々しさ、猥雑さを売りにして、日常では見られない品や芸、獣や人間を見せる小屋掛けの興行である。
ウイキペディアより
戦国時代末期、盛り場や神社の境内で、小屋を作り、珍しいものや曲芸を見せ、入場料を取っていたのが、見世物小屋の始まり。
特に江戸時代から明治時代にかけて流行し、その後も形を変えながらも現代まで生き続けている。
具体的には、蛇食い女・目玉を出し入れする目玉小僧・珍しい動物などを見せたり、おならで芸をしたりといった内容で、多種多様であったようだ。
珍奇(ちんき)、禍々しさ(まがまがしさ)、なんだか普段は使わないような言葉で、聞くだけでも奇妙な感じが、興味をそそる。
しかし、身体障害のある者を見世物にする小屋もあったため、明治時代には良くないイメージもあったとのこと。
現代の見世物小屋は、怪しくも、誰もが嫌な気持ちにならずに楽しめるものに、変化していると思う。
放生会の見世物小屋、外観
こちら、筥崎宮の放生会の見世物小屋。
「見世物まつり」と堂々と描かれた幕に、「大魔奇術ショー」「楽しいカッパ天国」などの旗が立っている。
入り口には、ハチマキを巻いた呼び込みのおじさん。
口ひげを生やし、正しく胡散臭い。
柄の襟なしシャツとピンクのズボンもいい感じだ。
安そうな垂れ幕の質感と色も、イカしている。
垂れ幕に演目が書かれている。
・年頃の女たちによる唄と踊りと手品
・びっくり魔術奇術ショー
・発見・美少女生首
・目出度い曲芸伝統芸
数年前に撮っていた写真には、別の演目が書いてあったので、年によって変わったりするのだろう。
入場料は、後払いで大人700円、小人500円、幼児300円だ。
カッパ押しのコンセプトがよくわからないが、色味が懐かしさを醸し出す。
放生会の見世物小屋に潜入
※ネタバレありです!
これから行く方で、何も知らずに純粋に楽しみたい方は、ここで読むのをやめておいてくださいね~。
知って安心して入りたい、という方。ただ見世物小屋を知りたい方はどうぞ。
場内に入ると、そこはまさに異世界。
天井には、頼りない木の梁と、ぶら下がった電球。
ムラサキピンクがかった色の空気。
中原中也の「サーカス」を思い出した。
「サーカス」
幾時代かがありまして
茶色い戦争ありました
幾時代かがありまして
冬は疾風吹きました
幾時代かがありまして
今夜此処 での一 と殷盛 り
今夜此処での一と殷盛り
サーカス小屋は高い梁
そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ
頭倒 さに手を垂れて
汚れ木綿の屋蓋 のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
それの近くの白い灯が
安値 いリボンと息を吐き
観客様はみな鰯
咽喉 が鳴ります牡蠣殻 と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
屋外 は真ッ闇 闇 の闇
夜は劫々 と更けまする
落下傘奴 のノスタルヂアと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
青空文庫より引用。
頭の中で、ゆあーん ゆよーん… とつぶやく私。
客席は、床板が斜めになっていて、後ろの人も見えやすいような仕組み。満員だ。板の薄さを足の裏から感じる。
ピンクの光で、客席の人々まで、昭和感が出てしまっている。
舞台は非常に近く、女や男がショーを繰り広げている。
右から徐々に左へと流れていき、最後に料金を払うシステム。
場内は撮影禁止なので、絵を描いた。
ショーは、つねに繰り広げられており、少しずつ進んでいる内には、全て見ることができる。
最初に見たのは、「年頃の女」による踊りや手品。
衝撃的な見た目だった。
メイクも、衣装も、レトロが爆発している。ダンスしている女性は3人いたが、なんと、全員ブラひもが出ている。これも多分、演出だと思う。
頭には花が咲いていたし、カーラーを付けた女性もいた。
後ろには、おじさんが2人、音楽隊として演奏している。
キーボードのおじさんは、だらしなボディに丸メガネ。かなりいい味を出していた。
1人の女性がカッパの人形2体と棒で繋がった、あやつり人形ダンスは見ものだったし、3人の女性での懐かしい動きのダンスも、ノスタルジックな動きや音楽が堪らなかった。
ただ、「年頃」は過ぎている女も混じってはいた気がする。
次は、着物女性が燃えるろうそくから蝋を口の中に垂らして、火を噴くショー。
椎名林檎似で、美人だったのが良かった。
生首の女性が、“ぴゅるぴゅる”(正式名称が分からない)を吹いたり、はげたツインテールのおじさんが出てきたりした。
ショーは他にもあったが、だいたいこんなところだ。
異様な空間に、何度も友人と目を合わせた。
舞台の幕には、「痺れ ポンチ 夢世界」と書かれていた。
時間にして、15分位か……。
ぼうっとしていてよくわからないが、幾ばくかの時間が、不思議なショーと共に過ぎ去った。
おわりに
とにかく、異世界へいざなわれた感覚。
昭和の煌びやかさと怪しさを、煮詰めたような空間であった。
筥崎宮の放生会で繰り広げられていたこの見世物小屋。
行っているのは、どうやら『デリシャススウィートス』という“雑芸レヴュー団”らしい。
「レヴュー」とは、大衆娯楽演芸のことらしい。
「入るのが怖い、けど、どんなショーが行われているのか気になる」という方。
おびえなくでも大丈夫です!
怖がりな私でも、楽しめました!
ぜひ、昭和レトロな世界に、足を一歩踏み入れてください。
ハマるかもしれません(*´з`)
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【福岡お祭り】筥崎宮の放生会についてはこちら。